財団法人住宅産業研修財団(国土交通省所轄)主催
第六回「真の日本のすまい」住宅保証機構理事長賞 受賞
この賞は、かつて我が国が培ってきたすまいづくりの知恵と伝統文化とこれまで果たしてきた役割を再評価し、地球や地域環境との関係を重視しながら新たな時代の要請にも応えることのできるすまいのあり方を追求し、すまいづくりに関する7つの基本理念を活かした「真の日本のすまい」を提案するものです。
財団のホームページはこちら
■配置図
■平面図
■立面図
■断面図
■提案趣旨
1、暮らしの知恵や日本の伝統・文化を受け継ぎ、人格形成の場となる住まい
2、高齢者や障害者が、自立して暮らせる住まい
3、地球環境を大切にした住まい
4、気候・風土を活かした住まい
5、財産を守る住まい
6、病気をつくらない住まい
7、生命を守る住まい
■配置図
敷地面積 330㎡
■平面図
■床面積(ポーチ、土庇、吹抜けを除く)
1階 73.95 m2(22.40坪)
2階 50.67 m2(15.36坪)
合計 124.62 m2(37.76坪)
土庇の家は中央アルプスと南アルプスに囲まれた伊那谷に工事中の住宅です。
天竜川を望む東側には一面に広がる果樹園と美しい山並、南側には遠く八ヶ岳を望める素晴らしい環境です。
若い御夫婦は小さなお子さん二人と、豊かな環境の中、趣味の畑を耕しながら開放的な生活を送れる住まいを希望されています。建物は雨風の強い立地を考慮して深い軒を出し、土庇を中心に小さいながらも開放的で自然を満喫できる住まいを目指しました。
■立面図
■断面図
■提案趣旨
私たちは、今も残る古い町並みや民家を「美しい」と感じます。それはものづくり、ものごとの正しい順序や決まりである「秩序」が保たれていたことにほかなりません。
秩序が保たれたすまいは、気候風土と調和しバランスが保たれ、地域の風景を生み出し、安心感がありました。「決めごと」のなかからつくられたすまいは、特定の家族に合わせたものではありませんでした。しかしこの事が、すまいに合わせて「すまう工夫」を必要とし、習慣や文化が生まれました。その中から生まれた秩序あるすまいが「和風・和室」ではないしょうか。
「美しさ」を求めてきた歴史が日本のすまいであるならば、ものごと、ものづくりの秩序を改めて見直すこと、がこれからのすまいには大切であると考えます。
土庇の家では、かつての日本のすまいにあった「決めごと」を見直し、これからも変える必要のないものは活かし、時代に合わない部分は新たな「決めごと」として提案します。
ものづくりの「決めごと」
- ・建物がどのようにつくられたか、一目見て成り立ちがわかる架構・構法を使うこと。
- ・定尺材など材料の適切な大きさからなるスケールを守ること。
- ・自然とバランスの取れる、時間とともに変化する素材を使うこと。
暮らしの「決めごと」
- ・すまいに合わせ「すまう工夫」をして、資源となるだれでも住める家とすること。
- ・すまいは家族が集まる場と考え、「開く」「集まる」「閉じる」といった人と人、人と自然との関わりを中心にした間取りを考えること。
- ・四季のある日本のすまいとして、季節による住み分けができる間取り、装置(土庇)を考えること。
1、暮らしの知恵や日本の伝統・文化を受継ぎ、人格形成の場となる住まい
- ・木と土と紙でできた住まいは自然とともに年をとり、家族の時間を刻みます。時間を感じる住まいには「懐かしさ」が生まれ、家族の絆を強め、そこにしかない風景が生まれます。
- ・無理のない架構を優先した間取りは、すまい方の工夫が必要です。家具の配置、室礼、気配り等、子供達の「住教育の場」になります。
- ・土庇は、信州の強い陽射しを遮り、長い冬は屋外活動の場となります。農作業や、薪の準備等の共同作業、近隣との交流を通して、生まれ育った子供の人格形成の場となる事を期待しています。
2、高齢者や障害者が自立して暮らせる住まい
- ・なにより、外との関わりを持てる住まいが必要です。外とは家族、近隣住民であり、時間や四季を感じる事の出来るニワでもあります。
- ・土庇に面した開口部は建具をすべて引き込め、自然の風、太陽の暖かさを感じることが出来ます。濡縁は内からも外からも使いやすく、気軽に外へ出て行く 事が出来ます。
![]() 「土庇」で開く |
![]() 自然とともに変化する素材 |
![]() 家族と自然を繋ぐ「土庇」 |
3、地球環境を大切にした住まい
- ・木構造として無理のないように、シンプルな架構を木で組み、土で壁をつくります。主な架構は3m、4m、6mの定尺材を使い、梁間は3間までとして、桁行きを2間単位で繋いで構成。主体構造を雨風から守り、内部空間を調整し暮らしを快適にするための下屋を配し、通し柱は4m材でまかなえるように軒高を押えています。
- ・形は作りやすく、壊しやすいように材料、作る過程を考え、材料は再生・転用可能で、時間とともに変化する木、土、紙、石を使用しました。
- ・加工手間のかからない独立柱に、地元の間伐丸太と自然石を使用しています。
|
|
|
| 木を組む | 粘り強い壁を作る | シンプルな架構 |
4、気候・風土を活かした住まい
- ・信州は湿気が少なく、夏場は強い陽射しを避けることで快適に生活できます。「土庇」で強い陽射しを遮り、谷筋に吹く南北の風を取り入れます。また、2階は南面の開口部を避け、東西方向に風を通します。
- ・一日の寒暖の差が大きいので、南北に並べた諸室を天候や時間帯に合わせて使い分け、設備に頼らない住まい方を提案します。
- ・暖房は長い冬を楽しめる薪ストーブを計画。蓄熱性のある土壁の外側に、断熱材として3センチ程の空気層、さらに杉の樹皮を固めた断熱材を張っています。冬場は外に洗濯物を干せないので、暖気が吹抜けと階段室を循環するように考え、2階のホールを冬場の洗濯干場として利用します。
|
|
|
| 吹抜けと薪ストーブ炉台 | 外壁断熱層 | 外壁 杉板竪張り目板押え |
5、財産を守る住まい
- ・軒を長く出し、外部は通気層を挟んで板張りで包むように雨風から構造体を守ります。
- ・木が痩せて目板が外れないよう、目板巾を90ミリとし、しっかりと釘で止められるようにしました。
- ・窓廻りからの漏水を避けるため、風あたりの強い妻側の開口は避けました。
- ・生活が変化した際、増改築に対応しやすいよう、二間ごとに大梁をかけた単純な架構としました。
6、病気をつくらない住まい
- ・内部は、調湿可能な土壁や板張り、隠蔽部分は通気層をとり、断熱材にも調湿性のある羊毛や樹皮板を使用。
- ・木材はすべて国産材を使用し、「燻煙乾燥」を採用。低中温でゆっくり乾燥させ、更に数カ月天然乾燥しました。
- ・材料は全て農薬などの薬剤が使用されていない産地の明確な国産材。
- ・土庇に面した開口部は建具をすべて引き込め、少々雨が降っていても自然の風を取り入れ、内に籠ることなく、精神的にも開放的な生活が送れます。
|
|
|
| 柱の断面欠損を避ける |
屋根を固める厚板シャクリ |
厚貫と竹小舞下地 |
7、生命を守る住まい
- ・木構造の粘り強さを活かす土塗壁。両面中塗り仕上げの壁倍率1.5倍として計画。貫はめり込み性能を期待し、24ミリ×105ミリの厚貫。
- ・柱の断面欠損を少なくするため、梁天端をずらし、通し柱は5寸角。
- ・大梁は、地震の際ホゾ抜けが生じた場合を考え、管柱を途中に入れて倒壊を避けることを考慮しました。
- ・屋根面、2階床面は水平剛性を確保するため、厚板を梁間に落し込み。
- ・事故などにすぐ対応できるよう、常に家族の気配が感じられるように見通しの良い間取りとしました


